*レヴューはすべてネタバレになっています。ネタバレを嫌いな方は読まないでください。ご覧になった後、お読みいただけると面白いかも。
正直粗探しのようなものです。とってもファンな方は読み飛ばして下さいね。酷評する意図はありませんから。
1999年作品。
演出:中村義洋(チーム・バチスタの栄光、ゴールデン・スランバー)
鈴木謙一
市販版やコンプリートボックスの内容とレンタル版で違いがあるといけないので、レンタルして来ました。ベースはレンタル版ということでお願いします。
記念すべき第1作。
今では、日本映画界の牽引役である中村監督の演出作品で、ご本人も出演されてます。
本編タイトルは「ほんとにあった呪いのビデオ」で「!」はありません。
冒頭、制作のきっかけとなったのは、
「スタッフの手元に届けられた1本のビデオテープであった」
と説明があります。
「偶然撮影された不可解な映像を紹介する」と内容も紹介されています。
この届けられたビデオテープが、第1話であり、シリーズのその後でも再度取り上げられる「白い着物の女」です。
第1話「白い着物の女」
引越しの作業が終わり、食事をとっている模様を撮影したビデオ。その中に写ったテレビに白い着物の女が写っていた。
心霊探偵として有名な小池壮彦氏をして、映像そのものは「本物の可能性が高い」と言わしめた映像です。小池氏は客観的な調査が多く、私も氏の執筆された記事は面白く読ませて頂いています。
さて、この映像の真贋を推理する前に、確認しておくべきことがあります。それは
「本巻は第1作である」
ということ。
視聴者からの「投稿映像」がウリなわけですが、1話目は「スタッフの手元に届けられた映像」ですが、本巻に収録された2話以降の映像は「このような不可解な映像がこの他にも数々発見されている」として紹介されています。これらの映像はどうやって見つけたのか・・・。市販する商品化できるレベルのものをどうやってかき集めたのかが、気になるところです。しかも途中から、表現が「投稿」になっています。
では、よく言われていることも含めて、推理していきましょう。
1.音声分析
スタッフが分析を依頼する「音響粒子学研究所」は存在しません。
貝原茂夫所長が使っているコンピュータはパイオニアのMac互換機。
私も持っている(と言っても押入れの中ですが)ものです。確かに当時のMacの中では異色のエンターテイメント機ですが、これに音声分析ソフトを入れて業務分析で使うか?と考えるとかなり疑問符がつきます。素直にappleのPM8500以上か、互換機ならモトローラを使うと思われ、実は初見の際、これを見てがっくりした記憶があります。
これは演出論になるでしょうが、映像が本物で、それをなんとか立証したいという姿勢ならば、この時点でモニター画面の映像をはっきり映しだすと思います。
おまけに、この人、嬉しそうな表情・・・。
事務所かスタッフの持ち物を使って撮影したのではないか?との推測もできます。
また、「ハウリング」との説明ですが、ご覧になった方は「ハウリング音」に聞こえましたか?
これは個人の受け取り方になるのでしょうが、私には「ハウリング音」のようには聞こえませんでした。この奇妙な音、そして「ウフフ」の笑い声を含め、その音だけが、鮮明に録音されているのも奇妙です。もちろん、これも「心霊現象だから」と言ってしまえばそれまでですが・・・。
2.画像解析
ビデオ映像の分析を依頼する「北鳳大学」は存在しません。
柴田典良教授が使っている機材も怪しいですね。当時はメモリーやハードディスクはべらぼうに高く、ビデオ映像をデータとして取り込むにも、今のような超圧縮技術もポピュラーではなく、ましてや解析するなら可逆方式で莫大な容量になるであろうaviで、まず取り込むものと思われます。しかし、それらしき機材どころか、ビデオデッキ1台、TV1台見当たりません。ビデオから1フレーム単位で必要なところを静止映像で抜き出して読み込ませたことも考えられますが、この研究室の中を見る限り、とても「画像解析」を「研究」している大学の研究室には見えません。
3.本巻最後に写っている顔
これは「白い着物の女」映像の中ではありませんが、検証取材を行なっている映像の中に映像が撮影された部屋の天井付近に写った女性の顔をクローズアップして終わります。これは、直感的に十分嘘臭いものですが、ここにも1つのポイントがあります。「白い着物の女」はその後、このシリーズ初期で複数回取り上げられることになるわけですが、この「天井の顔」については大して触れないままで終わったと思います。普通、こんなものがほんとに撮れちゃってたら、「白い着物の女」映像以上に分析すると思いますが・・・
4.展開
スタッフは、白い着物の女性の正体を突き止めるため、不動産屋に向かい、以前の居住者を調べ始める。この話の中では、どういう説明をして前居住者の居所を聞き出したかは不明ですが、シリーズの他のエピソードではかなり普通に「呪いのビデオ製作委員会の者ですが」と名乗っています。普通、「呪いのビデオ製作委員会」と名乗った時点で協力してもらえないと思うのですが・・・。
とにかく、前居住者との取材を行い、同じ体験をしたというのですが、直接白い服の女性が隣に座っていたという、霊がブラウン管に映ることより怖いであろう体験をしているにもかかわらず、消えたTVの画面が引っ越しても怖いと言っています。その現象は入って右側の部屋での現象で他の部屋では起こらないとも語っています。このことは、後日、このシリーズを検証する上でポイントの一つとなるので、頭の隅にでも置いておくといいかも知れません。
また、途中で体調を崩したあと「モニターで見ても・・・」と発言。当時の一般人が、モニターって言います?可能性低いと思います。「ビデオで見ても」くらいの表現じゃないでしょうか?脚本っぽいと思います。
5.移動する白い着物の女
VHS版では画質の問題もあり、編集機でABフレーム(1コマの半分のコマ)再生してもわかりにくかったのですが、DVD版で見ると、この女性と思われる白いものが隣の部屋へ消えてゆくような映像が実は写っています。
「白い着物の女」本編映像では、白いふすまが閉まっているので「隣に部屋はない」と思いがちですが、検証映像の部分を見ると、隣に部屋があることがはっきりとわかります。
最初に「白い着物の女」がブラウン管に写った直後、画面手前の女性がタバコを吸い、その頭でTV画面が一瞬見えなくなります。
ナレーションでは、その後カメラが再びTVのブラウン管を移すと女性らしき影は消えているとなるわけです。
タバコを吸おうとする女性の頭でブラウン管が見えなくなったところで、静止。序々にそこからコマ送りしてゆくと、白い影がブラウン管左へ消えてゆくのがわかります。ブラウン管に写っているものは鏡面映像ですから、画面で言えば右側、すなわち隣の部屋へ消えて行ったわけですね。
私はこの消えてゆく白い影は、頭でブラウン管を隠している間に、幽霊役の人が隣室に入り、ふすまを閉めて隠れたのだと思っています。
版権問題がなければ、コマ抜き画像を連続でアップしたいところですが、是非レンタルでもして頂いて、ご自身でチェックしてみて下さい。
第2話「トンネルにて・・・」
神奈川県にある心霊スポット、小坪トンネルで撮影されたもの。
車中で回しっぱなしにしたビデオの映像に、後から見たら不可解な人影が写っていたと言うもの。
電話で、スタッフからの取材に応じた運転していた男性が、「ハンディカム」と言っていることが、ちょっとひっかかってます。バンディカム=SONYのビデオカメラ なわけですが、写ってる映像から判断すると、オートフォーカスを使っていないようです。普通、使いませんか?実は、プロの人、オートフォーカス使わないケースが多いんですね。車内で撮影する場合は、車内のモノ、人は至近距離なわけですが、外の景色は遠景なのでオートフォーカスがオンの場合は、これだけ写っているものが変わると大きくピントが何度もずれると考えられます。それがあるのでプロはオートフォーカスを使わないケースが多いのです。しかし、一般の人はいちいちピントなんか合わせていられないし、どういう設定をすれば、この状況なら大筋ピントが合うかなんてわからないから、オートフォーカスを使うわけです。ちょっと、映像関係者による撮影っぽいですね。
もっとも、第1巻は、投稿映像ではないわけですから、「なんかないかー」と関係者に声をかけたら、見つかったものなのかも知れません。
写っている不可解な人影は、自動車の進行に合わせて遠ざかってゆくので「壁にある染み」と考えることもできますし、私にはそのように見えます。
小坪トンネルに何度か行ったことがあるのですが、ああいうものが写っていても不思議ではありませんが、いずれ検証を兼ねてまた行ってみたいと思っています。
第2話の終わりにスタッフが別に発見した「顔」らしきもの。これは、合成や、顔に見えるところを見つけ出しただけと言われても仕方のないものですね。また、車内に反射するものを置いて撮影することもできるでしょう。
第3話「墓参りの記録」
墓参りを記録した8mmフィルムの映像に大きく写った「女性の霊」。
8mm映像の場合、元がフィルムなので、1999年当時でもPhotoShop、After Effect、Premireの連携作業で簡単にこの手の物は本物らしく作れてしまいます。
状況証拠はありません。
かなり古い8mmのようですが、この手のものを引っ張り出せたのは本物にしろ、偽物にしろ、パル企画ならではですね。パル企画でなければ難しかったかも知れません。
第4話「劇団の稽古風景」
小劇団のリハーサル風景を収めたビデオに白い人影が写っていた。昨年その劇団で公演目前に交通事故で死亡したらしき女性がいると言う・・・。
投稿者である小劇団G.O.A.の演出家吉見和孝氏は実在の人物で実名です。
リハーサルはつかこうへい原作の「寝取られ宗介」と思われ、劇団G.O.A.も実在しました。
2つポイントがあります。
この作品が発売されたのが、1999年の8月。吉見氏演出の「寝取られ宗介」公演が同年9月。これって、タイアップじゃ・・・。
もう一つは、先のナレーションで「このような不可解な映像がこの他にも数々発見されている」とあるものが、既に「投稿」されてきたものになっている点。募集もかけてないのに投稿?製作中に、投稿映像の募集を思い立ち、それにあわせて「投稿」になったものと思われます。そもそも、本物であったとしても、「投稿」ではなく、探しまわって出てきたものではないでしょうか。
いずれにせよ、写っている「不可解なもの」は、このシリーズでも、他の作品でも比較的多く見ることのできる白いノイズチックなもので、「定番」。合成もしやすいものです。
また、シリーズを通して疑問に思えることですが、投稿者や撮影者本人に取材をしている場合、なぜ、映像がダビングを重ねたような、とてもマスターと思えない画質のものしか出てこないのか?ということがあります。
最近では、デジタルハイビジョン放送もあり、カメラ性能もコンパクトで高画質なものが一般普及してしまい、それに呼応するかのように、シリーズで紹介される映像も、画質の悪い「携帯映像」や「防犯映像」、「チャットなどのPC映像」の比率が急激に高くなっています。「携帯映像」などは、一見普及が進んだからと思いがちですが、果たしてそれが理由でしょうか?MicroSDなどに残された不可解な映像を、一般の視聴者が、メディアコピーをして編集部に送る?その辺の謎は、実は比較的最近のシリーズで明らかになってしまいます(その巻のレヴューで改めて触れることにします)。
映像に手を加えた場合、仕上げにダビングをすることで不自然さを消したり、検証しにくくするのは常識的手法ですが、デジタル→デジタルの場合、その意味がありません(DV撮影くらいが、ダビングによるリアリティを出すには限界)。すなわち、携帯撮影の投稿者が多くなったからではなく、作り易いメディアにシフトしていったと推測できるわけです。
第5話「結婚パーティーにて」
披露宴を記録した映像に人の腕らしきものが写っていた。
これは4話と同じ手法で作られたものだと推測できます。
状況証拠はNG。
第6話「事故現場にて」
事故現場を通りがかった映像のガードレールに顔が。
これは顔に見えない人もいると思いますが、4,5,6話と続けてみると写っている霊と思しきもののトーンが全て同じ・・・。
状況証拠はNG。
第7話「監視カメラ」
カラオケBOXの監視カメラに一瞬、不可解な人物が写り込んでいる。
府中市のカラオケ店の経営者からの投稿とあります。
リアルタイム、コマ飛びしない、トラッキングやテープノイズの多さなどから、監視カメラ映像であるならば、超低速VHSデッキで撮影されたものと推測できます。
監視映像の中で、宴会はともかくいちゃついているカップルがいます。コレがポイント。
まだ、個人情報保護法にうるさくなかった当時でも、コレ写ったものを商品として売られること前提で投稿する経営者がいるでしょうか?モザイクもかかってないし。
また、製作者も本物ならば、このカップルにかぎらず、万が一のクレームを考え、お店を特定できないようにあちこちにモザイク入れると思います。
この後のシリーズで、「シリーズ監視カメラ」として数多くの監視カメラに偶然捉えられた映像が、紹介されることになりますが、その多くが、勤務者の持ち出し投稿。さらに、取材まで受け、下手をすると会社に無断投稿したものなのに取材許可のお伺いを立てる・・・。言うまでもありません。状況証拠的にはアウトです。
第8話「生中継番組」
生中継(すなわち本番)に、ノイズが入り、出演者の顔が歪む
某テレビディレクターの投稿・・・。
まず、ディレクターは版権を持っているわけではないので、一存での投稿自体あり得ない話。ディレクターならそれくらいは重々わかっているわけですが、仮に無謀なディレクターによる投稿があったとしても、版権や出演者の二次利用などの問題を抱え込むことになるし、関係者が許可しないと可能性が高いので、採用そのものがまずあり得ないと推測できます(稀に、関係者が心霊好き、もしくは心霊ネタのタレントの場合、許可が出ることもあります)。
設定はローカルTV局の番組、で、生中継が哲学堂?
ローカル局が長距離生中継を組む場合、余程の大作と思われ、ならば、哲学堂から推測すれば、テレビ埼玉、千葉テレビ、テレビ神奈川、MX。強いて言えば、TV東京も加わるかも知れません。おまけに、単発番組ではないようですから、こんなこと実際に起こったのなら稲川淳二さんの「プラスα」並に伝説になっているかと思います。
そもそも、この映像自体、「リング」のパクリにしか見えません。
顔が歪んでいるだけでなく、文字のようなものも写っていたり、終盤の映像には、井戸を彷彿させる水の溜まった金属孔の水面に映るカメラマンの映像がありますが、「リング」を十分意識していることがわかります。
第9話「大学校舎にて」
大学校舎に肝試しに行ったら、光る浮遊する不可解な人影が。
これは、かなり評判悪い映像ですね。
撮影は、数々の都市伝説の本拠地との噂もある筑波大学。
私の推測も他の方々と同じで、いわゆる逆影絵と思います。
第10話「盗撮・試着室」
試着室での着替えを盗撮した映像に顔が。
これは、本物なら犯罪映像になるわけですから、らモラルがあれば使わないと思います。
フェイクなら安心して使うかと・・・。
投稿ではなく、アダルトビデオとして販売されているものに写っていた と言うのであれば、使用はあり得ると思いますが、投稿の場合は使用は慎重でしょうね。
映像的には4,5,6話と同じトーンのもの。これだけ同じようなものが続くと、宇宙人は全部グレイと同じ感覚に陥ります。
第11話「千駄ヶ谷トンネル」
撮ろうと思って撮れるものなのか、千駄ヶ谷トンネルに撮影に行ったら浮遊する髪の長い女性に見える映像が撮れてしまった。
ここも何度も行ったことがありますし、また行く予定でもある場所です。
上はお墓なんですね。
近くの旧ビクタースタジオも心霊スポットで有名な場所でした。
これもかなり微妙です。
状況証拠はありませんが、作れる映像の範囲。もしくは、このように見えるように撮影することも難しくないと思います。
もっとも、微妙と言うのは、私には髪の長い女性に見えないんです。これを書くにあたって再見したのですが、やぱりそうは見えなかったので。
霊感がないので仕方ないのかも。
あれやこれや重箱の隅をつつくようなことをしてしまいましたが、これが、フェイクドキュメンタリーの面白さだと私は思っています。
そして、必ずいくつかの「重箱の隅」をつつくことができない壁にぶつかるのも楽しみの1つです。
これは「本物」と思って騙されている場合が大半でしょうが、本当に「本物」もあると思っています。
偽物を本物に見せるために本物を紛れ込ませるという手法がオーソドックスなように、中にはきっと本物もあると信じて探し続けます。
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